神様が、みんな出雲に遊びに行くころ、栗栖野というところを越えて、とある山奥を徘徊していたときに、果てしない苔の小径を歩いて奥へ突進し、落ち葉を踏みつぶして行くと、一軒の火をつけたらすぐに燃えそうなぼろい家があった。木の葉で隠れた、飲料水採取用の雨どいを流れる滴の音以外は、全く音が聞こえてこない。お供え物用の棚に、菊とか、もみじが飾ってあるから、信じられないけれど誰かが住んでいるのに違いない。
「まったく凄い奴がいるもんだ、よくこんな生活水準で生きて行けるなあ」と心ひかれてのぞきをしていると、向こうの方の庭にばかでかいミカンの木がはえていて、枝が折れそうなぐらいミカンが実っているを発見した。そのまわりは厳重にバリケードで警戒されていた。それを見たら、今まで感動していたこともばかばかしくなってしまい「こんな木はなくなってしまえ」とも思った。