たいして用事もなく人の所へ行くのはよくないことである。用事があって行ったとしても、その用事が終わったら、とっとと帰ったほうがいい。長居しているのは、大変うっとうしい。
人と向かい合っていれば、沈黙が気まずいので言葉も多くなり、身もぼろぼろになり、落ち着かなくなってくる。色々とやらなくてはいけないことを、後回しにしながら時間を過ごすのは、お互いにとってもろくなことではない。それから、迷惑そうな顔をして、お客さんと話すのもよくないことである。お客さんに対して気にくわないことがあるのならば、かえってその理由を言ってしまったほうがよいのだ。気心が知れていて、ずっと向かい合っていたいような人が、何もすることもなしに、「もう少しいてくださいね。今日はゆっくり落ち着いて語り合いましょう」などと言うのは、この話には当てはまらないだろう。竹林の七賢の阮籍(※注1)が、招かざる客を白目で見つめ、嬉しい客を青い目で見つめたという昔話は、誰にでもあるようなことだ。
とりわけ意味もなく、人が来て、だらだらと話していくのは、大変よいことだ。それから、手紙でも、「ずいぶんご無沙汰してしまったので」とだけ書いて送ってきてくれたとしたら、とても嬉しい。
■注
(※注1 中国、晋の隠士。竹林の七賢、第二十一段参照)