何を考えるにしても、昔々の世の中を憧れてしまう気持ちがある。最先端の流行ものといったら何もかも安っぽくってみみっちくなっているみたいだ。タンス細工の名人がつくった道具なんかも、クラシカルであったほうが存在感がある。
手紙に書かれた言葉なんかでも、昔に書かれたものは、たとえちり紙交換に出すようなものだとしても素敵だ。ただ、何となくぱらぱらと話す言葉でも、しだいに話すのもめんどくさくなってしまうみたいだ。昔であれば「車を発車させてください」とか「電気をつけてください」とか言っていたのに、この頃の人は「発車!」とか「点灯!」とか言っている。宮中の役人達に「役人達よ立ち上がれ」と言っただけでもよかったことを「立ち上がってたいまつで明るくしなさい」と言うようになったり、最高級のお坊さんをよんで世界平和を祈る儀式をエンペラーが特設会場で鑑賞するのを「ゴコウノロ」ろと言っていたのに「コウロ」と言うようになったのは「非常に遺憾に絶えないことです」と古風で頑固なおじさんが言っていました。