「やんぬるかな。世も末です」とは言うけれど、今になっても、九つに重なった門の中で行われる、くらくらするような皇室の出来事の数々は、軽薄な世間にそまらないでいてきらびやかなままだ。
「ロダイ」とか「アサガレイ」とか「なんとか殿」とか「かんとか門」とかいう名前も、いわくありげに聞こえる。貧乏人の家によくありそうな格子を組んだ小窓や板の間、左右に開く板戸なんかでも皇居で見かければ、格別に思える。夜間警備のときに「テントの中に灯りをともして下さい」と言うのもすごくよい。ベッドルームの支度の際に「灯りをともす菜種油を早く持ってきて下さい」などと言うのも、これまたすごくよい。運営の責任者が警備本部で仕事している格好はもとより、下っ端が、神妙な顔をしてそれらしく振る舞っているのも、おもしろい。猛烈に寒い夜中に、(下っ端が)あっちこっちに転がって眠っているのも、興味がそそられる。「三種の神器が眠る温明殿に皇帝が来たことを知らせる鈴が鳴るときは、素晴らしくエレガントである」と、藤原公孝(※注1)が言っていた。
■注
(※注1 一三〇二年に太政大臣になり、一三〇四年に退職、翌年、五十三才で没)