円教寺(※注1)の性空上人(※注2)は、法華教を毎日がんばって読んでいたので、目と耳と鼻と舌と体と心が冴えてきた。性空上人は旅行中、仮寝の宿に入ったとき、豆のかすを燃やして豆を煮ている音がぐつぐつ音を立てているのが「昔は一心同体の親友だった豆のかすが、どうしたことか恨めしく豆のぼくを煮ている。豆のかすは、ぼくらを辛い目に遭わせるやつだ」という声に聞こえたそうだ。一方、豆のかすがぱちぱち鳴る音は「自ら進んでこんなことをするものか。焼かれて熱くてたまらないのに、どうにもできない。そんなに怒らないでくださいな」という風に聞こえたそうだ。
■注
(※注1 播磨の国の書写円教寺。いまの姫路市にある)(※注2 円教寺を開いた高僧)