「本の表紙は薄い絹でできているから、すぐぶっ壊れてしまうから困る」と誰かが言ったら、頓阿(※注1)が、「薄い絹の表紙は、上下がぼろぼろになって、巻物は、軸の貝の装飾品がとれて落ちたほうが味がある」と言ったので、偉いなあと思って思わず見上げてしまった。「全集などが、装丁がそろってないのはみっともない」と誰かが言えば、弘融僧都(※注2)が「なんでも全部ものを揃えることは、あほのすることです。揃っていないほうがつつましい」と言ったのには感動してしまった。
「何につけても、完成していることは悪いことです。やり残したことをあるがままにしておくほうが、面白くて可能性があるのです。皇居を改築するときも、必ず作り残しをするんですから」と誰かさんが言っていた。昔の偉い方が書いた、仏の本や儒教の本にも文章が欠けているのがあることだし。
■注
(※注1 本名、二階堂貞宗。吉田先生の友人。兼好、浄辧、慶運と一緒に二条派の四天王に数えられる)(※注2 仁和寺の僧。弘舜僧正の弟子)